「保険の話なら結構です」。法人開拓を始めたFPが、最初に何度も聞く言葉です。
断られるのは、あなたの説明が下手だからではありません。社長から見て、会う理由がないからです。会う理由は、保険の外側で作ります。
この記事のポイント
- 会う理由は、保険の外側にある「社長の得になる情報」で作る
- 初回面談から提案までの5つのステップのうち、保険の話はステップ5だけ
- 決算書を読んだら、労い・ギャップ・これからの3つの気づきを返す
なぜ社長は、保険の話を聞いてくれない?

経営者の頭の中を占めているのは、売上、資金繰り、採用、後継者といった会社の課題です。保険は、そのどれかを解決する道具の一つにすぎません。
道具の話から入ると、社長は「売り込まれる」と身構えます。課題の話から入れば、同じ社長が自分から時間を取ってくれます。
会う理由は、何から作る?

会う理由として使いやすいのは、社長がいずれ確認しなければならないのに、自分では追いきれない情報を、決まった周期で届けることです。
- 補助金・助成金の公募時期をまとめた年間の一覧
- 最低賃金や社会保険料など、人件費が変わる時期の一覧
- 融資制度の金利や条件が変わった、という知らせ
どれも保険とは関係ありません。それでも、届けるたびに「数字に詳しい人」として覚えてもらえます。情報を届けたら、「御社に関係がありそうなら、決算書を15分だけ拝見できますか」と一言添えます。
注意したいのは、制度の情報は必ず国や自治体の一次資料で確認してから届けることです。日付や条件が一つずれるだけで、信頼は一度で失われます。
初回面談から提案までは、どう進める?

| ステップ | やること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 1 初回面談 | 社長の話を聞く。時間の8割は聞き役 | 保険の話はしない |
| 2 決算書を預かる | 「読むのは15分、必ずお返しします」と伝える | 範囲と扱いをはっきりさせる |
| 3 ギャップを金額にする | 決算書の8つの場所から、もしものときの資金ギャップを出す | 4つの資金ギャップの手順 |
| 4 気づきを3つ返す | 労い、ギャップ、これからの3つを伝える | 結論を押しつけない |
| 5 必要から保険を決める | お金が要る時点と金額から、保険の種類を絞る | 社長が決める形にする |
気づきの3つは、どう伝える?
労いは事実で、ギャップは金額で、これからは問いで伝えます。架空のモデル会社(固定費は月735万円、現金2,600万円)での話し方の見本です。
- 労い:「固定費が月735万円。これを毎月回してこられた資金繰りは、簡単なことではありません」
- ギャップ:「もしものときの立て直しに要るのは4,000万円台から。手元は2,600万円なので、差が出ます」
- これから:「この差を現金で貯めるか、ほかの形で備えるか。決めるのは社長です」
お世辞ではなく決算書の事実で労い、形容詞ではなく金額の差だけを置き、最後は選択肢を社長に返します。ここまで、保険という言葉は一度も出てきません。
それでも多くの場合、社長の側から「じゃあ、どうすればいいの」と聞かれます。提案は、その一言のあとに始めます。
よくある質問
- 紹介がないと、経営者には会えませんか?
- 紹介は有力な入口ですが、それだけではありません。経営者が集まる勉強会や、地域の経営者団体で情報を届けることから始められます。
- 決算書を預かったあと、何日で返すべきですか?
- 預かる前に返す日を約束し、その日を守ることがいちばん大切です。コピーを取る場合は、事前に了承を得てください。
- 社長に「で、保険は何を勧めるの」と先に聞かれたら?
- 「御社に何が必要かは、数字を見てからお答えします」と伝えて、ステップ2に進みます。先に商品を出すより、信頼が残ります。
根拠資料
- この記事の金額は、架空のモデル会社による説明用の試算です(外部資料の引用はありません)

